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赤ちゃんがアーティストに!? フィンランド発祥のワークショップ

17.04.12

東京・代々木八幡のケースギャラリーで、赤ちゃん向けのユニークなワークショップ「カラーバス(色のお風呂)」が開催された。集まったのは生後7カ月から1歳7カ月までの乳幼児5人とその親たち。赤ちゃんたちの前に置いた紙の上に、講師の島塚絵里さんが、絵の具をスプーンで落としていく。絵の具はすべて食べられるもの。オレンジは人参のピューレ、紫はブルーベリー、黄色はマンゴー、茶色はカカオ、といった具合だ。

▲ ケースギャラリー(東京・代々木八幡)は、北欧のテキスタイルやデザインを中心に紹介するギャラリー。

▲ ギャラリーに集まった赤ちゃんたち。ワークショップの時間は30分〜40分。赤ちゃんの集中力が持続する時間だ。

▲ 島塚さんが赤ちゃんの前に絵の具を落とすと……。


突然目の前に広がる鮮やかな色に赤ちゃんたちの瞳が輝いて、何の戸惑いもなく手のひらをピューレに押し付ける。そのまま手のひらを紙にこすりつけたり、叩いたりして感触を確かめた後、手を口に運んで舐める。赤ちゃんによっては指先だけで触ったり、足の裏で大胆にかき混ぜるなど、すでに個性が垣間見える。一方、1歳半を超えてくると、どろどろしたものに直接触れることにためらいを見せる。そういう場合には島塚さんがスプーンなどの道具を渡す。すると楽しそうに絵の具で遊びはじめた。

▲ 使用した紙は吸水性がよく丈夫な、シュタイナー教育で使われている厚手の画用紙。

▲ 今回の絵の具は野菜とフルーツの離乳食だが、ベリーやカカオの粉末、食用色素などを使うこともある。

▲ ほとんどの赤ちゃんにとって「はじめてのお絵かき」。完成した絵は壁に張り出して、持ち帰る。

▲ 1歳以上の子どもに道具を渡すと、いきいきと遊びはじめる。


参加者は口コミで集まり、各回5組の枠はあっという間に定員となった。参加理由について、親からは「日本にもベビーヨガなどはあるが、親が赤ちゃんにしてあげるようなプログラム。これは赤ちゃんが主体なので興味を持った」「汚れるので家ではなるべくやりたくないが、場所があってグループなら楽しめそう」といった声が聞かれた。日々の暮らしでは、「こぼさないように、汚さないように」と気遣うことが多いが、ここでは「何でもあり」。思うままに動いて、喜ぶ赤ちゃんを見守りながら、親もリラックスし、楽しんでいる様子が伺えた。

▲ 完成した絵は、抽象絵画そのもの。ジャクソン・ポロック顔負けのアクションペインティング。


赤ちゃんの五感を刺激

このワークショップはフィンランド語で「Värikylpy」(http://www.varikylpy.fi)と呼ばれ、訳すと「カラーバス(色のお風呂)」。2003年にフィンランド・ポリ市の子ども文化センター(Pori Centre for Children’s Culture)がポリ市美術館(Pori Art Museum)と共同で、赤ちゃん向けに開発したビジュアルアートのワークショップである。

その目的は作品をつくることというより、触感や味覚、香りなどで赤ちゃんの五感を刺激することであり、同時に赤ちゃん同士や親子のインタラクションも重視している。父親の育休取得率が高く、赤ちゃん教育の盛んなフィンランドで近年広がりを見せており、ヘルシンキでも美術館やカルチャーセンターなどで開かれる機会が増えているという。現状は資格制ではないが、ポリ市ではカラーバスのインストラクターを養成するコースが設置された。

今回、ワークショップを開いた島塚絵里さん(http://www.erishimatsuka.com)はフィンランドを拠点に活動するテキスタイルデザイナーで、現在、ケースギャラリーで個展も開催している(4月16日まで。4月20日〜5月7日は富山で開催)。「日本で個展を開くことになり、せっかくなので現地の文化を紹介できればと思いました」と話す。

▲ テキスタイルデザイナーの島塚絵里さん。現在、テキスタイルブランド「キッピス(kippis)」にデザインを提供するほか、自身のテキスタイルブランド「ピックサーリ(Pikku saari)」を展開。

▲ ケースギャラリーではピックサーリやムーミンコラボの新作を展示し、フィンランド独立100周年を記念した限定トートバッグも販売する。


島塚さんとカラーバスの出会いは、ヘルシンキのカルチャーセンターで生後半年の娘と一緒に参加したこと。冬の長いフィンランドでは、子ども向けのインドアプログラムが充実している。しかし、赤ちゃんを対象としたアートプログラムは記憶がなく、興味を持ったそうだ。「現地ではコース制になっていて、毎回作品のテーマが異なり、いろいろな材料を使います。回を重ねるごとに娘がよく動くようになり、親としても発見が多く、とても楽しいプログラムなんです」。島塚さんは今後も娘とともにカラーバスに参加しながら、より専門的に理解を深め、日本でも紹介していきたいという。

▲ ヘルシンキでのカラーバス・プログラムの様子。現地では、4〜11カ月、1歳〜2歳、2〜3歳向けなど月齢に応じた内容を実施する。Photo by Eri Shimatsuka

▲ 大きな布の上で、赤ちゃん同士がインタラクションしながら絵を描くこともある。絵の具は、片栗粉やコーンスターチに水を混ぜて団子状にしたもの、ブルーベリーの実など形状もさまざま。Photo by Eri Shimatsuka


個展「Mökki」(フィンランド語でコテージの意)は、ケースギャラリーで4月16日(日)まで。15日(土)、16日(日)にもカラーバスのワークショップも開かれるが、すでに満席となっている。(文・写真/今村玲子)


「MökkiーーERI SHIMATSUKA EXHIBITION 2017」

会期 2017年4月1日(土) 〜 4月16日(日)
   11:00〜18:00

会場 CASE GALLERY (東京都渋谷区元代々木町55-6)
   ※入場無料

詳細 http://case1823.blogspot.jp/2017/03/case-gallery_18.html


巡回展「チリングスタイル」

会期 2017年4月20日(木) 〜 5月7日(日) 
   10:00〜19:00 ※火曜定休

会場 チリングスタイル(富山県富山市大手町6-14 富山市民プラザ1F)

詳細 http://www.chillingstyle.jp

※ワークショップは22日(土)に開催。問い合わせはチリングスタイルまで。



今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在「AXIS」などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。

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