首都大学東京インダストリアルアート学域「プロダクトデザイン特論D」インタビューシリーズ   

第1回 鈴木啓太さん「モノの歴史を進めたい」

17.03.04

首都大学東京 インダストリアルアート学域の授業「プロダクトデザイン特論D」において、学生の皆さんが3チームに分かれ、第一線で活躍するデザイナーの方々にインタビューを実施。インタビュー中の写真撮影、原稿のとりまとめまで自分たちの手で行いました。シリーズで各インタビュー記事をお届けします。第1回は鈴木啓太さんです。

鈴木啓太さん「モノの歴史を進めたい」

デザインオフィス「PRODUCT DESIGN CENTER」を主宰し、商品企画からデザイン、ブランディングにいたるまでを幅広く活動し、今注目されているデザイナー鈴木啓太さんに、デザインに対する考え方や、学生へのメッセージを伺いました。

普遍的で機能的な美しいモノ

――デザイナーとしてやりたいこと、目指しているものは何でしょうか。

僕がやりたいことは、去年海外でもプレゼンテーションをしたのですが、普遍的で機能的な美しいモノをつくり、モノの歴史を一歩進めるということです。モノには脈々と続く歴史があり、石器から始まったものがナイフになったりしていくように、絶えず人によって進化させられてきた。今の時代に生きる者として、デザイナーとして、もう十分にモノがあるのに、僕たちがつくり続ける理由は何だろうと考えた時に、1つの答えは、過去から先人たちが脈々とつくってきたモノたちを現代に最適化させて、進化を連鎖させ、未来にモノをつなげていくということ。それが、僕のやりたいことで、やるべきことだと思っています。

――いちばん思い入れのある作品は何ですか?
富士山グラスです。デザインして、賞をもらって、商品になるという初めての体験ばかりで、代表作にもなった。自分でアイデアを考えて、デザインして、製造先を見つけて依頼して実際につくって、どうやって売るかを考えて、しかも良く売れて商業的にも成功したという意味では、初めて自分のつくったものが社会に届いたという実感がありました。それから独立して5年経ったのですが、今僕がやっていることは、50パーセントくらい鉄道関係や公共のデザインになっていたりします。

――最近は公共物のデザインを多く手がけていらっしゃるのですね。

そうですね。富士山グラスのようなデザインは、好きか嫌いかで完結するじゃないですか。好きだったら買うし、好きじゃなかったら買わない。でも公共物は選べない。「今日はいつも乗ってる電車が嫌いだから歩いてきます」とはならないですよね。やはり、みんなが使うデザインって本当に重要で、しかもめちゃくちゃ難しいんです。法律の規制もすごく多いし。だからやりがいもありますし、とても面白いですね。

――具体的にどう進めていくのですか?

デザインに着手する前の段階がすごく重要で、クライアントとの間で方向性を正確に固められたら、あとは自分たちがやるべきことに集中できるし、デザインは自由でいられる。だからどういう方向性でデザインするかを決めるまでに多くの時間をかけます。
 アイデアは論理的につくることが重要で、自分の感覚でというよりは理詰めでつくっています。形は手で確認しながらつくる模型とか、手を使って考証することも大事にしていて、結局ありとあらゆるパターンを検証しているんですよね。よくできたものだけをひたすら繰り返してアップデートしていくと、何かができるんです。誰かがつくるというよりは、たくさんの選択肢をつくって行くと自然に決まっていくみたいな、舟の形は海が決めるような、そういうふうにコンテンツが決まっていくことを目標にして、やっている感じです。

「可能性ある」病と「領域広げたい」病

――ひとりの人間がつくり上げるものではないと?

僕のプロジェクトの基本的な考え方は、集団的に創造したほうが面白いということなんです。いろんな知性を累計的に合わせていって何か新しいモノをつくる。デザイナーがデザインしたモノも、エンジニアがエンジニアリングしているし、誰かが材料をつくっていて、工場で生産したり、組み立てたりしている人がいる。多くの知識の系統を反映してモノをつくることが、現代の様式なのだと思うと、デザイナーに求められていることは、デザインの専門家として完璧なデザインを提供することですよ。
 最近すごく思っているのは、今のデザイン業界って、「可能性ある病」というか「領域広げたい病」みたいなものにかかっているなと。でも僕は、必ずしもそうではないと思うんです。集団的知性のものづくり時代では、他分野は他分野の専門性に任せた方が良くて、デザイナーはもっと自分の領域のデザインを深めること・極めることに没頭した方がいいと僕は思っています。

――テクノロジーの発展でデザイナーの役割はどう変化するのでしょうか?

プロダクトデザイナーの役割は変わらないと思います。でも、モノのつくられ方は変わってきていますよね。テクノロジーが何を生み出すかというと、圧倒的に時間を短縮してくれるわけです。デザインのプロセスにおいては、ワンクリックで正確な線が引けるし、3Dプリンターで結構すぐに模型がつくれる。だから新しいツールは積極的に取り入れています。これまでモノをつくることは、本当に時間が掛かることだったけれど、デザインは鮮度がすごく重要で、今この瞬間に考えていることが明日実現されることが絶対だと思うんです。そういう意味で、早くモノがつくれるようになることは大事なことですね。

まずは、自分のコップを満たす

――デザインを学んでいる学生にメッセージをお願いします。

世の中って「天才」たちがつくり上げている感じがするじゃないですか。新しいものを発明したりだとか。でもそんなことはないと言いたいんです。デザイナーもそうです。デザインというのは、技術と専門知識が重要で、それらは訓練すればするほど洗練されていくから、たくさん数をこなしたほうがいい。自分の経験では、とにかく訓練をしていろんなことを学んでみて、自分の頭の中をいろんな知識で満たしていったときに、初めてそこからアイデア的なものとか、デザイン的なものが零れ落ちてきます。なので、そのコップを早めに満たしたものの勝ちということなんだろうな、と思います。知識を学生のうちに貯めまくることが重要なのかもしれない。やはり、コツコツとやり続けるってことが、いちばんの成長につながるということ。それ以上の良い答えはないんじゃないですかね。デザインはそういうものだと思うし、自分の仕事もそういうものだと思っているし、そんな感じでいかがでしょうか(笑)。(インタビュー・文・写真/首都大学東京インダストリアルアート学域 荻江 諒、杉本瑞穂、唐 寧、根本新大、村上友香梨、山内哲仁)

鈴木啓太/1982年愛知県生まれ。プロダクトデザイナー、PRODUCT DESIGN CENTER代表。幼少のころより骨董蒐集家の祖父の営業を受け、ものづくりを始める。2006年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。12年PRODUCT DESIGN CENTERを設立。醤油差しから鉄道車両まで、幅広い領域の製品開発に携わる。
http://www.productdesigncenter.jp

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