連載コラム「期待の若手クリエイターに尋ねる、今そしてこれから」   

第4回「岩元航大 一見エラーに見えるものを考え直す」(後編)

17.02.10

昨年、フリーランスのデザイナーとして活動を始めた岩元航大さん。インタビュー前編では、神戸芸術工科大学・Design Soilでの活動、スイス・ECALでの製品化を念頭に置いたカリキュラムなどについて語っていただきました。後編では、昨秋、自ら主宰した「Re-Importation」展を皮切りに、これからの活動について伺います。

インタビュー・文/今野敬介


昨年、海外のデザイン大学を卒業した7名の合同展覧会「Re-Importation」を外苑前のイチーズギャラリーで開催しました。展覧会をオーガナイズした経緯を教えてください。

▲「Re-Importation」展メインビジュアル。会場探しから協賛企業への交渉、会場構成、告知などを岩元さん自ら行った。http://www.re-importation.com/


岩元航大 2015年に「E&Y 30th Anniversary exhibition “evergreen”」の関連トークイベントにスピーカーとして参加したときに、「若いデザイナー志望の人たちは今どこにいるのか」という質問を受けたり、東京のデザインウィークの時期に勢いのある展示会が減りつつあるんじゃないかという話になったり、僕たち若手が作品を発表する機会について考えさせられました。ECALに戻ってから、自分たちにできることはないかと、他の日本人学生と話したんです。

海外にいる日本人の立場から、ECALのほか、英国のセントラル・セント・マーチンズやオランダのリートフェルト・アカデミーの卒業生たちが一堂に展示したら面白いんじゃないかという話になって。海外にいる学生が日本に戻ると、キャリアは一からのスタートになるじゃないですか。だから、いつ、どこで作品を発表するかが、大事になると思ったんです。

それに、日本人留学生が徐々に減っている印象があり、その問題を解決したいという思いもありました。会期中は、留学の相談を受けたり、今でも情報をくださいと連絡をくれる子もいます。僕らは海外に行くことでスキルを身に付けようとしたわけじゃないですか。でも日本にいながら、それを実践している人もいると思うんです。僕らの展覧会を見て、日本でもできるっていう闘争心みたいなものを掻き立てて、相乗効果を生み出したいという気持ちもあります。

▲ 7名の作品を、発泡スチロールを積層した展示台に陳列。会期中は全員が作品の横に立ち、来場者に説明する姿が印象的だった。彼らの出身校をはじめ、スイス・オランダ・英国などのデザイン大学の資料も配布した。


展覧会で岩元さんは「Tube Flattening- Stool」という作品を展示されました。

自宅の小さな工房で生産できるものとして考えました。手を動かして、つくって、売るという最後のところまで自分でやることに憧れていたので、それを表現できる加工方法を探していくうちに、チューブ・フラッティング(チューブパイプ平坦化)という技法を見つけたんです。もとは2本のチューブを接着させるときに、一方をフラットにすることで面積を増やすという溶接の工法です。

チューブを平らにするのは簡単な方法だと気づいたのと、その1回の行為で、2つ、3つのファンクションが生まれることが面白いと思って、チューブの潰し方をスタディしていきました。スタディを重ねていくうちに、もとはパイプを潰す目的ではない器具で曲げたらどうなるかと、中が詰まった鉄芯などを曲げるハンドツールを使いました。すると上手いことに、軸に沿ってキレイに曲がる。でも曲げたものを取り外そうとしたら、軸に噛み付いて取れなくなってしまった。最初は「失敗した!」と思ったんですが、噛み付くということは何かを固定できると。固定するというファンクションを使って、折り畳み式のスツールにたどり着いたんです。

▲ ひたすら手を動かしてつくった「Tube Flattening- Stool」。このローテクさが岩元さんらしい。


日々デザインするなかで、自分に課しているルールはありますか?

大事にしているのは、独りよがりにならず、自分のアイデアを人に話して、形を変えていくような進め方です。デザインの引き出しを増やしたいので、自分がこれまでつくってきた家具やオブジェをあえて遠ざけ、最初から答えを見つけようとしない、身近に転がっているアイデアを見過ごさないように心がけています。そして、やっぱり手を動かすことで、気づきを生んでいくやり方にこだわりたい。一見エラーに見えるものを、もう一度考え直すことを大切にしたいです。


ECALから戻ってきて、日本のメーカーに就職することは考えなかった?

考えました。ただ自分のなかで、どこかに所属しながら、プライベートワークも並行させる自信がなかった。たぶん、おろそかになっていくんだろうなと。それなら最初から自分でやっていったほうがやりがいもあり、プロダクトでも同じですが、何もないところからすべてをつくっていくのがすごい好きなんです。

僕の周りには、自分の手を動かして、ものづくりをしたいという人が多いので、その影響もあるのかもしれない。でも今いちばんの問題は、制作できる環境が整っていないこと。今までは大学の工房があって、機材があったんですけど、どうしようかと悩んでいます。トマス・アロンソがRCAを卒業したメンバーたちと、イーストロンドンに事務所を兼ねた工房OKAY studioをつくったように、理想ですけど、そういう動きができたらいいなと思います。

▲ 現在進めているプロジェクトのスタディ。発表するのはまだまだ先だと話す。Photo by Satoshi Watanabe


今後の活動について、教えてください。

3月のIFFS(シンガポール国際家具見本市 http://www.iffs.com.sg/)でデザインスターズという枠に声をかけていただいています。あと、スペインのメーカーともプロジェクトを進めていて、おそらく4月のミラノサローネで発表します。

「Re-Importation」も続けていくつもりです。国の数も増やしていきたい。1回目は海外大学をその年に卒業した学生に限ったけれど、昨年展示した僕らも並行して展示できるようにしていきたいと考えています。定期的に発表するからこそ、仕事につながっていくと思うので、今後も継続していこうと思います。


インタビューを終えて
岩元さんのようにフリーで活動したいと思っている人は少なからずいるはずだろう。収入の面で苦しい部分はあるが、それでも個人で活動する理由は、スピードと、1つ1つの工程を自ら確認したいから。彼は自身の気づきや経験を最終の成果物に落とし込んでいる。Design SoilやECALで力を試す時間があったからこそ、今があるのだろう。今後も活動していくなかで、多くの人と出会い、気づき、新しいものを生み出していく。目が離せないひとりとなりそうだ。


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Photo by Satoshi Watanabe


岩元航大 Kodai Iwamoto/1990年鹿児島県生まれ。神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科在籍時に、デザインプロジェクトDesign Soilに参加し、ミラノサローネやアビターレなどに出展。卒業後はフィリピンのセブ島に語学留学し、2014年にスイスのローザンヌ美術大学(ECAL)プロダクトデザイン修士コースに進学。トマス・アロンソやBIG-GAMEのオーギュスタン・スコット・ドゥ・マルタンヴィルらの下で学ぶ。現在はフリーランスデザイナーとして、国内外のメーカーとプロジェクトを進める。

Kodai Iwamoto Desgin: http://www.kohdaiiwamoto.com

岩元航大のECAL日記: http://kodaiiwamotoecallife.tumblr.com



今野敬介 Keisuke Konno/1991年宮城県生まれ。神戸芸術工科大学デザイン学部プロダクトデザイン学科卒。同学科のプロジェクトinfoguildにおいて米国で映像を制作。同じく同校のDesign Soilプロジェクトではミラノデザインウィーク時の展示をサポートした。韓国留学を経て、現在はデザインジャーナリストとして活動中。https://m.facebook.com/keisukekonnokk

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