連載コラム「Lighting Edit」   

第17回 「建築家と職人とのコラボレーションから」

17.02.01

建築家やインテリアデザイナーからの依頼を受けて、住空間や店舗にオリジナルの照明をつくって納めるということを、工場や職人さんたちと一緒にやった経験があります。今回改めてその空間のためだけにものをつくるということについて考える機会がありました。

2016年12月からスタートし、2月25日まで開催中の展覧会「建築家×家具職人コラボレーション展」は、建築家の中村好文さんと、横山浩司さん、奥田忠彦さん、金澤知之さんの3人の家具職人が長きにわたり製作してきた家具を通して、お互いの関係性を見ることができる内容です。職人にとってクライアントである建築家、または同じつくり手として感覚を共有できる建築家と職人の関係について、中村さん、横山さん、奥田さんに話を聞くことができました。

中村さんが独立してすぐに出会ったという横山さん。ちょうど横山さんが自身の工房を開いた頃で、付き合いは約30年以上。中村さんが描いたスケッチや図面をもとに試作をし、双方で確認をしながら完成させていく。ときには図面がないこともあり、中村さんの望む形をつくっていくために何度もやりとりが続くのだと言います。

「最初のころ、中村さんは穏やかに話すんですけど、でき上がったものに対して厳しい指摘もあったり」と語る横山さん。ますは指定されたとおりを忠実につくることに専念するそうです。職人としてはついあれこれと欲張ってしまいがちになりますが、横山さんは「自分は中村さんの“手”でいいと決めたんです」と言います。

中村さんの家具デザインに対する想いは強く、大学卒業後最初に就職した設計事務所を辞めてから、職業訓練校の家具職人を養成する木工科に入ります。そのような経験からつくり手としての感覚に理解が深いのだと思いました。自身がデザインした家具は完成まで、細部にわたってゆずれないところがありながら、職人へ任せ、つくる側へ入り込みすぎないようにしているのだと言います。


中村好文さん(左)と金澤知之さん。

それは、職人側も同じで、お互いの役割を尊重しあい信頼関係を築いていくことによって生まれる、阿吽の呼吸なのかもしれません。彼らについて、あちこちで語られる「対等」という関係。奥田さんは「最初は対等だと思っていなかった」と言います。ただ、仕事を重ねていくなかで、中村さんが納得するものをつくるように心がけていくと、互いに気を使わず、遠慮もせず、我もはらない関係性ができていったということです。

1992年に発表し、今もつくり続けているラパンチェア。奥田さんはこれまでに900脚以上もつくっているそうです。同じものをつくり続けていくと、少しずつ手順が変わっていきますが、クオリティが上がっていく。それは、中村さんが常に同じものを望んでいるからであり、「中村さんが変わらないから」と奥田さん。建築家としての中村さんはコンセプチャルとは対極に体質的に考えるほうなのだと言います。好みの手触り、感覚的なものは何年経っても変わらないのだと。

横山さんと奥田さんが、中村さんとの仕事で特に印象深いのが安曇野ちひろ美術館 なのだそうです。館内で使われる家具のデザインを中村さんが手がけ、横山さんと奥田さんがつくりました。数も規模も大きく、製作期間も約半年で、さまざまな条件があるなか「時間をかけてつくるよりも、集中してつくるほうが良いものができた」と横山さん。このような規模の大きなプロジェクトを含む、さまざまな実績の積み重ねによって、信頼だけではなく、ゆるぎない対等な関係ができてきているのだと思います。中村さんの住宅建築の約7割に彼らのつくる家具が納められているのです。奥田さんは、中村さんのことを「建築家という職人だと思う」と言います。中村さんは「家具も建築も分けて考えたことがない」と話してくれました。

ワークショップ「ペーパーコードの座編み」で指導する 金澤知之さん。

施主というクライアントの要望を聞きながら、中村さんの設計でつくられていく住宅建築。クライアントと中村さんとの関係のなかで、その家のためだけにつくられる家具。この展覧会では、中村さんと3人の家具職人とのコラボレーションから生まれた数々の家具を見ることができます。さらに職人それぞれが使っている道具も展示されています。3者それぞれの個性のある道具でありながら、中村好文という建築家を通して生まれてきた家具のテイストに通じるものを感じます。会期中には、横山さん、奥田さん、金澤さんの監修の下、家具づくりに参加できるワークショップも開催されています。

ワークショップ 「ミルキングストゥールの製作」で指導する奥田忠彦さん。

横山さん、奥田さんが言います「木でつくれるものなら、どんなものでもつくってみたい」と。中村さんの建築は、職人たちの変わらない意識と感覚を持続させながら、彼らの新たな意欲をも掻き立て、新たな可能性を引き出していくのかもしれません。

ワークショップ「ミルキングストゥールの製作」で指導する横山浩司さん。

家具や照明などの量産品ではなく、必要とされるものだけを「手」によって丁寧につくっていく。今回の取材では、そうしたスタイルも確実に存在し続けるだろうと確信すると同時に、それがメーカーの新しいあり方へとつながるヒントになるのではないかとも感じました。(文/谷田宏江、ライティングエディター)

「中村好文×横山浩司・奥田忠彦・金澤知之 建築家×家具職人 コラボレーション展 at the A4」
2016年12月14日(水)〜 2017年2月25日(土)
日・祝日及び12/24(土)、12/28(水)〜1/4(水)、2/11(祝・土)休館
開館時間 10時〜18時(最終日は〜17時)
*会期中開催のワークショップおよびシンポジウムは申込終了となっています
取材・写真協力 : ギャラリーA4

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