アート   

よりエモーショナルになったテクノロジーアート、 アート+コムとライゾマティクスリサーチの展覧会

17.01.31

東京・初台のNTTインターコミュニケーション・センター [ICC] で、2組のクリエイティブ集団による「光と動きのポエティクス/ストラクチャー」展が開催中です。先進技術や仕掛けの存在を忘れてしまうような詩的な表現が、次世代のメディア・テクノロジーアートの方向性を示唆しています。

本展の主旨について、主任学芸員の畠中 実氏は1月14日に開かれたトークイベントで次のように話します。「20世紀はじめから発展してきたメディア・テクノロジーアートは、現在、アートにかぎらず空間デザインやパフォーマンスといった分野にまで広がっています。今回は、光と動きという要素を先鋭的に活用している2組のアーティストを選びました」。

1組は、1988年に設立されたベルリンを拠点とするアート+コム。もう1組は、真鍋大度氏(メディアアーティスト)と石橋 素氏(エンジニア)が主宰するライゾマティクスの研究開発部門であるライゾマティクスリサーチ。2組ともアーティストやプログラマー、デザイナーなど多様な職能を擁するチームであり、自主制作だけでなくクライアントワークを通して広く表現しています。

アート+コムを現在率いるユッシ・アンジェスレヴァ氏は、「10年前よりもテクノロジーが普遍的なものになり、今は組織だからこそできるイノベーティブが期待されています。ライゾマティクスの取り組みはいつも新しい」と語ります。

一方、真鍋氏は「僕らより20年以上も長いキャリアを持つアート+コムの取り組みから、ずっとインスピレーションを受け続けてきました」。当初、2組によるコラボレーション作品を展示する計画があったそうですが、「光と動き」という共通テーマを設けて個々に発表することで、コンセプトが共鳴しあうような空間をつくり上げました。

▲ アート+コムの作品「RGB|CMYK Kinetic」。2015年のソナー・フェスティバル(バルセロナ)で発表された作品の東京バージョン。空中で動く円形の鏡に光を反射させ、光、色、動き、音楽という要素を統合させた。
Photo by Reiko Imamura

▲ ライゾマティクスリサーチの作品「distortion」。5台の鏡面カートが移動しながら、投影された映像を反射させて床面に描画する。ある1つの視点からのみ正しい像を得られるように元の像を歪めて描くという、15世紀からの技法(アナモルフォーズ)をモチーフにした。


どちらの作品も光の構造を読み解き、混色、反射、動きといった要素を組み合わせている点で、20世紀初頭に始まったテクノロジーアートの系譜を引き継いでいると言えます。しかし、畠中氏は「彼らの作品がこれまでのテクノロジーアートと異なるのは、ポエティック(詩的)でエモーショナル(情緒的)なものを表現していること」と説明します。

石橋氏も「今の時代は、お客さんがテクノロジーの仕組みに驚くだけでは足りません。仕組みがなくても感動できる、ストーリーを感じさせる作品をつくっていきたいのです」。

そこで重要になってくるのが「パフォーマンス」という要素。アート+コムが展示した作品は、反射板の滑らかな動きや速さが「驚異的なほどに細かいレベルで調整され」(アンジェスレヴァ氏)、光があたかもロマンティックなダンスを踊っているかのような、まさに「パフォーマンス」と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっています。

▲ 左、主任学芸員の畠中 実氏。右、アート+コムのユッシ・アンジェスレヴァ氏。

▲ 左、ライゾマティクスリサーチの真鍋大度氏(メディアアーティスト)。右は石橋 素氏(エンジニア)。


「2006年の東京・大崎のパブリックアート「Duality」以降、映像と身体の動作を関連づけたコレオグラフ(振り付け)作品をつくるようになりました」とアンジェスレヴァ氏は振り返ります。2010年の上海万博では、100の義手と鏡、モーターを組み合わせて振り付けした作品「Mobility」や、光の反射だけを使って天井にリアルタイムで描画していく「River is」などを次々と生み出してきました。

一方、ライゾマティクスリサーチもPerfumeやダンスチーム「ELEVENPLAY」、野村萬斎といったパフォーマーたちとのコラボレーションを数多く手がけています(動画はこちらへ)。

石橋氏は「コマーシャルワークを手がけることで、公共スペースやエンターテインメントといった場で発表できるようになり、観客の幅が格段に広がっている」と言います。

今回の作品については、「インスタレーションとして展示していますが、最終的にはダンサーのパフォーマンスを取り入れるなど、会期中にいろいろな使い方を試みたい」と真鍋氏。「インタラクティブ作品の課題として、作品の質や効果が体験者に依存してしまうことがあるんです。つまり、体験者の動きがつまらないと作品もつまらなくなる。プロのダンサーが入ることで、思いがけない身体の動きが、システムの可能性を飛躍的に高めることがあるのです」。

美術、映像、音楽、ダンス、エンターテインメントといった領域をテクノロジーによってつなぎ、表現の形式やフィールドを拡張し続けているアート+コムとライゾマティクスリサーチ。畠中氏が「今、いちばん新しいことをやっている」と評価する2組のクリエイションを同時に体感できる、大変貴重な展覧会です。(文/今村玲子)

※文中のコメントは、1月14日にICCで行われたトークイベントより引用しています


アート+コム/ライゾマティクスリサーチ
光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」

会  期 2017年1月14日(土)〜3月20日(月・祝)

会  場 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]  ギャラリーA

開館時間 午前11時〜午後6時(入館は閉館の30分前まで)
     *金曜、土曜は午後8時まで

休 館 日 月曜、2月12日

入 場 料 一般・大学生 500円、高校生以下無料

主  催 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

詳  細 http://www.ntticc.or.jp/ja/



今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。

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