連載コラム「Lighting Edit」   

第15回「照明ブランド ブロッキスの挑戦」

16.09.13

ブロッキス(BROKIS)という、チェコ共和国・ボヘミア地方で2009年創設の照明ブランドがあります。洗練されたデザインと上質なガラス工芸とが一体になった照明器具は、2013年と15年の2度、ミラノの見本市「ユーロルーチェ」に出展し、注目を集めました。

200年以上続くボヘミアンガラスの高い技術を有する工場が、その技術を守るべく立ち上げたこのブランド。現在、工場の全ラインの20%がブロッキス、80%が他国の照明メーカー数社のガラス部材、ガラスグローブの製造を行っています。日本では、海外のフラワーベースやエクステリア家具のインポーターを務めるTISTOUがブロッキスの輸入総代理店をしています。今回、TISTOU 代表の平田倫子さんにお話を聞きました。

TISTOU蔵前ショールーム

チェコはプラハに活動の拠点を持つ、プロダクトデザイナー、ルーシー・コルドヴァをアートディレクターに迎えて、スタートしたブロッキス。彼女のディレクションは、「技術を守る」という工場の想いにとても合致していました。ルーシーのデザインは、これまでにブロッキスの技術ではつくったことのない形状や、大きさのものがあったと言います。職人たちは、新たな挑戦をすることになり、それは結果として工場のレベルを上げ、可能性を引き出すことになっています。

ブロッキスの照明プロダクトに使われるガラスは、伝統的なボヘンミアンガラスのように装飾性の強いものではなく、シンプルで大胆なボリュームが特徴。それには高い技術を必要とする部分が多く、開発技術者たちのポジティブな姿勢が感じられます。工場には約20名の職人がいて、平均3人でチームを組んでいます。そのうち、2名は若手、1名は熟練の技能とキャリアのある年長者。師弟関係とは違った雰囲気があり、お互いから吸収しようという気持ちが現れているそうです。

ガラス工場は、火元の管理と早朝からの始業が必須で、朝は5時スタート。しかし彼らは、始業2時間前の3時から仕事を始めます。上昇志向が強く、なによりも、「この仕事が好き」だという空気が溢れているそうです。

TISTOUで取り扱っているアイテムはブロッキスのラインナップの中から「MUFFINS」「SHADOWS」「BALLOONS」の3種類。

「MUFFINS」

MUFFINSとSHADOWSは、どちらも電球のソケット部分は木製。ガラスではないものの木部の仕上げがとても精巧です。特にSHADOWSでは、ソケットカバー部分の曲線の仕上げに驚きました。スチールであれば型によって成型し、技術的にも難易度が高くないはず。これは、ガラスと接触する部分の緩衝の度合いがスチールよりも木のほうが柔いことを前提に、ガラスと一体化するような緩やかに繋がる曲線をつくっています。ガラス以外の素材にも、高い技術を追求し商品全体のクオリティを高めているのです。

「SHADOWS」

「BALLOONS」

BALLOONSは幅428mm 高さ600mm。このボリュームは、手拭きガラスの成型ではそう多く見ることはありません。そして、形状も上から下にいくにつれて窄まっていて、この形をつくるには長い修行を要します。その技術を習得した職人にのみ製作を許されるというアイテムです。

ものづくりへの妥協しない考え方は、マーケテイィングにも通じているようで、多くのメーカーが競う市場を狙うのではなく、必要としている人たちへ向けたマーケティングを行っています。上質で、デザイン性の高い照明プロダクトは、ハイエンドをターゲットとした家具ブランドからも評価が高く、ヨーロッパのラグジュアリーブランドのショールームでもスタイリングされています。ブロッキスの商品群を見ると特徴的なのが、「曲線」「色ガラスの豊富なバリエーション」「異素材との組み合わせのバランス」です。そして、透過するガラスの中にあえて電球を含む照明部材をそのまま見えるかたちでレイアウトしています。そのセンスの高さのなかに自信が垣間見えます。

TISTOU蔵前ショールーム

ガラスを中心にフラワーベースや、エクステリア家具のインポーターを務めるTISTOUがなぜ、照明ブランドブロッキスを取り扱うことになったのでしょう。輸入照明器具は、いくつかの国内仕様の規準をクリアすることが必要とされます。その手続きに伴うリスクは照明を専門としていない業種にとってはハードルが高いはず。

「人が生活をしていく空間や場所において、照明は重要です。フラワーベースやエクステリ家具を扱うなかで、それらと同等なクオリティで顧客に提案できる照明が必要でした」と平田さんは言います。そして、現在の蔵前のショールームを計画しているときに、海外の見本市で偶然ブロッキスの担当と出会ったそうです。平田さんに照明器具に対する先入観がそれほどなかったことが、抵抗なく取り扱うことにつながったのかもしれません。

ブロッキス代表のラヴェル氏との国内仕様への打ち合わせ風景。

照明の国内規準を満たすために地道な努力をし、3アイテムの販売がスタートしました。今後はさらにアイテムが増えていくそうです。国内では、まだ認知度は高くありませんが、15年と16年のインテリアライフスタイル展のTISTOUブースでもブロッキスが紹介され、建築家やインテリアデザイナー、ライフスタイルショップからの注目が高まっています。ガラス製造技術を進化させてきた照明ブランド、ブロッキスが、これからどんな新しいデザインと技術へ挑戦をしていくのか、興味と期待が膨らみます。(文/谷田宏江、ライティングエディター)

取材協力 : TISTOU株式会社 http://www.tistou.jp/

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