連載コラム「Lighting Edit」   

第14回「ミナ ペルホネン、新たな2つの空間」

16.07.07

皆川 明さんによるファッションプランド 、ミナ ペルホネンのショップが白金から代官山に移転しました。移転先は、旧山手通り沿いのヒルサイドテラス。都心ながら、落ち着いた心地よさが感じられる人気の施設です。ショップ内には2つのエリアを有し、それぞれ趣の違う空間となっています。特に注目したいのは、内装材のセレクトと照明とのコンビネーションです。

旧山手通り沿いに面した店舗と、同じ1階の建物内奥側の店舗。前者はウィンドウが天井の高さいっぱいの開口でガラス張りになっています。通りから見ると、ギャラリーのようなディスプレイで、ミナ ペルホネンの世界観を感じることができます。営業時間外はカーテンが引かれ、常灯の照明によってライトアップされます。日中の外光と日没後の照明とのバランスも見どころの1つです。

店内の床には、牛革がスクエアなタイル状に敷き詰められています。天井はミナ ペルホネンオリジナルの刺繍テキスタイル「skyful」が全面張りに。天井も床も、ともに艶のない表面仕上げなのでダウンライトからの明かりが照り返すこともなく、とても落ち着いた空間になっています。

一般的な店舗の場合、塗装やクロス張りの天井が多く、埋め込みのダウンライトの輪郭が、照明の存在感として現れてきます。それによって天井の高さを実感しやすいのですが、このskyfulというテキスタイルは柄が細かく、ダウンライト自体の存在感を吸収し、光だけがフレキシブルにディスプレイに差し込んでいるように見えます。実際よりも天井が高く、空間が大きく感じられる効果を出しています。革の床は、時間が経つごとに風合いが変わることで、店内を自然にエイジングさせていくことにもなるのでしょう。

こちらの内装はトーンを抑え、落ち着いた表情ですが、天井には、カラフルな色ガラスでつくられた球体が集まったシャンデリアが設置されています。これは白金の店舗のときからのシンボル的な存在。

奥の店舗は旧山手通り沿いとは対照的な雰囲気です。床は明る目な多色のヘリンボーン柄のカーペット。天井は銅板で仕上げられており、あえてマットな加工をせず、銅の艶がそのまま華やいだ効果を出しています。そして、同じ銅のトリムのダウンライトを採用。天井とダウンライトのトリムが同化し、光だけが降り注いでいるように見えます。床がカーペットなので、その光を吸収し、余計な反射がありません。銅も経年変化で味わいが出てくる素材。時間とともに店自体に重厚感が出てくるような気配を感じます。

レジカウンターの奥の壁にも注目。凹凸のある小石のような表情のタイルは、皆川さんがデザインし、陶芸家の安藤雅信さんが制作したもの。照明が差し込み陰影によって壁に立体感が生まれ、空間に奥行きを感じさせます。

フィッティングルームも個性的。広さも十分で自分の部屋にいるような感覚になります。壁の素材は紋紙という織機のパンチカード。これが一面に施され、同じく艶がない壁の表情になり、ミラーに対して無駄な写り込みをつくりません。

両店内共通のハンガーラックの什器は、special source によるもの。代表のモリソン小林さんのスチールワークで、ハンガーラックに草花を象り着色した鉄を溶接しています。無機質になりがちなハンガーラックに表情を与え、照明の光を拾うことで、空間に躍動感を与えます。

両店舗に共通しているのは、空間を構成する素材と照明との相性が良く考えられているということ。すべてのインテリアデザインを皆川さん自身が考え、施工業者や職人の方々と相談しながら、2つの空間をつくり上げていったそうです。

皆川さんに今回の店舗について聞きました。「空間ができて、什器のレイアウトが完成すれば、どの洋服がどこにディスプレイされるかがすぐにイメージできます。照明に関しても、照度の足りないとところに追加で足していくというような判断がスムーズにできるのです」と。服づくりとインテリアデザインの考え方は一緒なのだとも言います。例えば、ポケットをどの位置にレイアウトするかと考えることのように。

今回の店舗の2つのエリア。一方はこれまでのミナ ペルホネンを引き継いだコンセプト。そして、もう一方はこれからの新しいミナ ペルホネンの世界をつくっていくというコンセプト。皆川さんはどちらも“ミナ”なのだと感じてもらえるようになりたい言います。時間とともに表情を変えていく空間にこれからも注目していきたいと思いました。(文/谷田宏江、ライティングエディター)

取材協力:ミナ ペルホネン/株式会社ミナ  www.mina-perhonen.jp
写真:高橋マナミ  ©minä perhonen 2016

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