連載コラム「Lighting Edit」   

第12回「TIME & STYLE a contemporary traditionーー現代の行燈」

16.03.31

昨年末、 TIME & STYLEから全14種類の行燈照明が発表されました。その特徴は、日本古来の行燈を現代の生活に溶け込むものへと編集しているところです。今回のテーマ「a contemporary tradition(現代の伝統)」に込められた想いを知り、そして行燈の歴史を辿ることで、これからの灯りの姿が見えてきます。

室町時代以降、植物油や動物油が入った受け皿に、灯芯を浮かべて火を灯すあかりがありました。江戸時代になってから和紙に木枠を施し火元を覆う「行燈」が使われるようになったといわれます。当時、行燈は武士や商人の間では浸透していたものの、庶民には高級品でした。

「有明行燈」(日本のあかり博物館所蔵)

有明行燈や雪洞(ぼんぼり)など、さまざまな工夫を凝らしたものから、細部に装飾を施し贅を尽くしたものまで、当時の文化が行燈からもうかがえます。TIME & STYLEの行燈シリーズは和紙と指物、そして光源は白熱球という組み合わせ。古典的な装飾は省略しシンプルで極めて繊細。そこには、行燈の歴史から学び受け継いでいく新たな伝統のあり方と、現代に生きる和紙職人、木工・指物職人のものづくりに対する精神の継承があります。

ランプシェードには美濃和紙を使用。最高級とされる那須楮を100%使用した手漉き和紙を若手の職人たちが仕上げています。

指物の支柱が限りなく細く絞られ、この細い脚の中に電源コードを挿入していますが、これには高度な技術を要します。コードの存在が気にならず、伝統的な灯りの風合いが現代の生活に溶け込んでいきます。TIME & STYLE代表の吉田龍太郎さんは、今回の行燈シリーズについて「西洋化した現代の日本人の生活では、伝統的な生活文化をそのまま取り入れることはかえって不自然。伝統は進化するべきであり、西洋性との融合が必要となっている」と語ります。

「雪洞」(日本のあかり博物館所蔵)

行燈の歴史を遡ってみると、主流は雪洞でほとんどが1本脚です。

3本脚の雪洞三脚行燈は、歴史ある意匠形態を現代の感性に響く形にしています。あえて、光源を白熱仕様にし調光できる構造にしているのは、白熱球レベルと違わない演色性のLED光源が出てきていないこともありますが、限りなく蝋燭の炎に近いほのかな灯りを体感できるからです。

エジソンが白熱電球を発明する以前、人々は知恵と工夫を凝らし灯火具をつくってきました。それらは灯りそのものの機能が進化するにつれて役割を終えていきます。吉田さんは、今回のテーマについて、「私たちにとって伝統は使うものであり、日常の中に継承してゆくものが文化となっていくのです。それがある限り、機械文明が高度に成長し、文明が疲弊してきても、日本人の伝統や生活文化は生き続け、世界の人々の生活にとって貴重な資産となると思います。今回のシリーズは、現代生活の中の伝統のあり方を行燈という灯りによって問うたものなのです」と。

いずれ、白熱球も時とともに使われなくなっていきます。そのときには、先進光源が灯りの原点でもある炎、そして白熱球が担ってきた文化を引き継いでいくでしょう。生きた伝統と生活の中で向き合い、伝えていくことも大切にしなくてはならない。TIME & STYLEの行燈シリーズは、これまで築いてきた日本の伝統を現代の生活へ、そして広く多くの世界に伝えていくきっかけの1つだといえます。(文/谷田宏江、ライティングエディター)

写真協力 : 公益財団法人 日本のあかり博物館
取材写真協力 : TIME & STYLE

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