連載コラム「デンマークとの共生デザインによる日本再生」   

第14回「IoTと共生デザインの役割」

16.03.14

Photo by Kensuke Nakajima

昨年からIoTがメディアを賑すようになり、日常的にIoTという言葉に触れるようになってきた。実はIoTは2013年3月の本コラム第4回で取り上げた 「 CPS 」(サイバー・フィジカル・システム)、日本語では「 IT融合 」と同じ概念である。IoTが取り上げられるかなり前からデンマークで同様のシステムが進展しつつあったことを考えると、デンマーク社会の先進性がわかると思う。そして最近はIoTに加えてインダストリー4.0、インダストリアル・インターネットという取り組みも新聞や雑誌で報道されている。これも特別新しい概念ではなく、IoTを産業戦略の視点で捉えたものである。インダストリー4.0はドイツ政府が主導しているプロジェクトである第4次産業革命のコンセプト、インダストリアル・インターネットはGEが2012年に経営戦略の中核に据えたコンセプトでIoTそのものである。

図1

筆者は現在でも極力CPS(サイバー・フィジカル・システム)という用語を使うようにしている。なぜならば、IoTもインダストリー4.0/インダストリアル・インターネットも社会システム全体を表現した概念になっていないからだ。人間中心主義が浸透しているデンマーク社会からするとまだ発展途上のコンセプトに見えてしまう。IoTはその対象がモノを中心とした社会システムであること。またインダストリー4.0/インダストリアル・インターネットは言葉のとおり、産業向けのスマートシステムであり、ドイツや米国が産業競争力強化のために策定した取り組みである。つまりどちらも、モノや産業という限定された領域のスマート化が議論の中心になっている。本来はスマート化したモノを活用し、インダストリー4.0/インダストリアル・インターネットで競争力を確保しながら、進化した社会インフラ上で展開される “高度な人間社会向けサービス ” の構築こそが最終的な目標となるべきである。残念ながら現状このような概念がないので、筆者はCPSを拡大解釈して使用していたが、最近は便宜的に「価値創造2.0」という造語で説明している。

この課題はデンマークも気づいており、オーフス大学はIoTを前面に出さず、CPSサーバー・フィジカル・システムズで社会全体を包含した「現実システムと仮想システムの統合と相互作用」を研究している。またアメリカの通信機器メーカーであるシスコ社は、IoE( Internet of Everything )というコンセプトを提唱しており、この考え方は拡大版CPSや価値創造2.0に近い。シスコは「IoTを基盤にして、その上でモノだけではなく、すべての人、情報システムがネットワークによってつながることを目指す」としている。面白いことに、シスコ社はここ数年、対デンマーク投資を急増しており、2014年にはコペンハーゲン市とビッグデータを活用したデジタルインフラに関する覚書に調印している。同社がIoTではなくすべての社会システムを対象としたIoEを提言するに至った背景としてデンマークとの連携で培った人間中心型システム構築の経験が影響していると確信している。

図2

筆者はIoTやインダストリー4.0/インダストリアル・インターネットというコンセプトはあと数年でメディアなどが取り上げなくなり、自然消滅すると考えている。そして、前述のとおり、モノや産業に限定されないホリスティックで、人間社会の発展に寄与するための新しい概念やコンセプトが創られると想定している。そのときにはビッグデータ、クラウド、AI(人工知能)なども要素技術の1つとして捉えられ、当たり前の技術として注目されることもなくなるだろう。

そして、次の議論として取り上げられるのが新しい技術を活用して創られるデジタル社会システムの理念やビジョンであり、それを実現するための「社会システムデザイン」になると考えている。社会システムデザインは漸く最近になって、その重要性が理解され始め、大学などでも学科として設置される事例が増えてきている。要は複雑化した現代社会において、本質的課題を見極め、単に技術やソリューションだけでなく、文化や風土、ビジネス慣習などを考慮しながら最適な社会システムをデザインの手法を活用して解決するアプローチである。その意味で筆者が提唱する共生デザインと似ているが、共生デザインはもう少し大きな概念として捉えており、共生デザインの中に社会システムデザインも組み込まれると考えている。そして社会システムデザインを含めた価値創造2.0を実現する具体的な方程式として、図3の通り日本の技術力にデンマークの革新性を加え、共生デザインを掛けることで達成出来るのではないかと期待している。この方程式については次回詳しく説明したい。(文/中島健祐、デンマーク大使館 投資部門 部門長)

図3

中島健祐/通信会社、コンサルティング会社を経てデンマーク大使館インベスト・イン・デンマークに参画。従来までのビジネスマッチングを中心とした投資支援から、プロジェクトベースによるコンサルティング支援、特にイノベーションを軸にした顧客の事業戦略、成長戦略、市場参入戦略等を支援する活動を展開している。デンマーク大使館のホームページはこちら

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