連載コラム「SHIKKI de SHUKI 2013展より」   

最終回「森の中へ」

13.07.30

「森の中へ」
デザイン:山本明彦
漆器制作:田口漆工房

●制作意図
木曽ならではの酒器をつくりたい。木曽の山や森、風土の延長にある、つまり木曽との連続性のあるモノづくりをしたかった。そこで、生地は、自分で地元の山の中に入り切り出してきました。まず生地になる木の生息する森を知りたいという理由で。

実際にどの木を使うか? 山中の森のに入り現場で想像しました。私にとって木曽の器は、地元の木、地元の漆でなければなりません。今回の制作に関しては、そのプロセスを最重要視しています。漆の器においては、生地やプロセスは見えにくいのですが、酒がそうであるように、酒器も風土やその土地への密着が最も重要だと考えています。

●デザイン(スタイリングや色、質感などのつくり込みに関して)
できる限り頭で考えた造形を入れこまないこと。具体的には「枝にくぼみを付けることで器になる」くらいのデザインをしました。例えば、「森の中で、自然な木の切れ端を削り、そこに酒を注ぐイメージ」。

会議室や工房ではなくて湿度のある森の中で考える。カタチは森の中にあります。また、同時に器の原点をも考えてみたかった。頭で意図した形や色よりも木曽の土地にある風景、土地、森、(風土)の延長に器を表出したかったのです。酒が風土と切り離せないように。

漆の技法など意図的なことは極力抑えてあります。難しい、複雑な表現はできるだけ避けて、最も基本的な塗りで仕上げました。色も墨の色、ベンガラなど古くからあるものです。それがいちばん木曽らしい器になると考えたからです。

その場所で、その土地の器で、その土地の酒を飲みたい。結論として、それがいちばんおいしい酒が飲める。そんなデザインです。

山本明彦 /1960年東京生まれ。84年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒。88年日本クラフト展大賞受賞、日本ジュエリー展特別賞、高岡クラフト展奨励賞。90年 映画「AI」の造形デザイン舞台美術など。以後、作家活動およびデザイン活動(時計、医療機器、家電、カメラ、ビデオ、VI、空間)を展開。 暇があれば画を描いたり、愛犬といっしょに新潟や富山に釣りに行く。

この連載では、去る2月14日〜16日の3日間にわたって、アクシスギャラリーで開催された「SHIKKI de SHUKI 2013展」に出展された9名のデザイナーによるそれぞれの理想の酒器を紹介していきます。

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