展覧会    連載コラム「復興に向かうためのデザイン」   

「つくることが生きること 東日本大震災復興支援プロジェクト」展、レポート

12.03.16

東京・千代田区の3331 Arts Chiyodaで、「つくることが生きること 東日本大震災復興支援プロジェクト」展が開催中だ。被災地で行われているアート、デザイン、建築といったクリエイティブな復興支援活動をパネルや模型、作品などを通じて、約80組の取り組みを紹介している。


▲村上タカシ「3.11メモリアルプロジェクト」

まず、会場を入ってすぐ目に飛び込んでくる“もの”に息をのむ。仙台在住のアーティスト・村上タカシ氏による「3.11メモリアルプロジェクト」の“作品”だ。ぐにゃりとくの字に曲がった道路標識や紙を丸めたかのような看板は津波によって流されたもので、災害の激しさを強烈に物語る。村上氏は「瓦礫がどんどん廃棄されていくなかで、きれいさっぱり元通りにしていいのかと疑問に思った。今は見たくない人もいるが、残すべきものは残して後世に伝えていく必要があるのでは」と、役所などに働きかけ、これらの公共物を合法的に回収できるように取り組んでいる。現在までに100点余りを回収したという。


▲遠藤一郎「GO FOR FUTURE」。未来美術家の遠藤一郎氏は、人々に夢を描き込んでもらう「未来へ号」に乗り、被災各地へ。5年前から取り組んでいたプロジェクトだが、「震災以降、書かれる言葉が変わってきた。“みんなで帰りたい”とか“みんな一緒に”とか、“みんな”という言葉が増えた」と言う

美術家の藤 浩志氏は震災後、福島県いわき市で「いわき復興モヤモヤ会議(福島)」を実施した。原発事故は福島の人々にとっても言葉やイメージにしにくいが、会議に参加して他者と話すことで、モヤモヤとした気持ちや気分が少しでも“言葉化”されていくことを重視する。藤氏は「いろいろな地域で活動するなかで、どんな小さなタネも見逃さずに興味と関心を注ぐことが必要だと感じた。水を注がなければ植物が育たないのと同じように、誰かが発した言葉に関心を注ぐことで、そこから何かの芽が派生するかもしれない」と期待を寄せている。


▲開発好明「デイリリー・アート・サーカス」

また「デイリリー・アート・サーカス」と題したアートプロジェクトを展開したのは開発好明氏だ。トラックにアーティスト7人の作品を詰め込み、約30日かけて西日本から東日本へ北上、義援金を集めながら巡回していった。被災地では小学校や美術館などにアートを貸し出し、子供たちがオリジナルの現代アート作品を身近に鑑賞する機会を設けている。今回の会期中にも貸し出しの要望があればすぐに対応する予定だ。「今後は、東北で起きたことを伝えながら、西日本へ戻っていきたい」と開発氏。


▲椿 昇「VITAL FOOT PROJECT」。「阪神淡路大震災のとき3日間ボーッとなった。あのときの反省から、次は絶対動くぞ!と決めていた」と椿 昇氏は、小型トレーラー付きの自転車を被災地に届けるプロジェクトに取り組む。このクロモリフレームのタフな自転車に椿氏自ら40年乗っているという。あわせて、原発事故に対する怒りと反省を込めた、来場者が参加できる映像作品も出展


▲「HEART MARK ♥ VIEWING」は日比野克彦氏が中心となり、ハートのパッチワークを用いて各地でワークショップをしながら被災地の景色を変え、気持ちをつないでいくプロジェクト

ほかにもデザインや建築の分野から数多くの出展がある。会場では震災発生時から時系列に沿って作品を並べることで、いつ頃どういったニーズがあり、そこに対してどのような活動が展開されたかを知ることができるように構成されている。


▲各展示コーナーには、時期と主な課題が示される


▲福島県の一級建築士事務所、はりゅうウッドスタジオによる「仮設住宅から復興住宅へ」と題した模型展示。役割を終えた仮設住宅を解体し、その材料を復興住宅に転用するアイデア


▲Creative for Humanity(クリエイティブ フォー ヒューマニティ) の「屋内の大地」プロジェクト。福島県での地震被害と放射能汚染という現状のなかで、子供たちが安心して過ごすことのできる屋内公園を提案。空き店舗に西日本や屋久島などから届いた土や木の葉などを配置する取り組み

本展を主催する「わわプロジェクト」は、被災者自身が復興プロジェクトのリーダーとして活動する15の事例を紹介し、「復興リーダーからのメッセージ」としてインタビュー映像を紹介している。来場者は、縦に設置された大画面モニターの前に座り、複数回の取材を経て撮影された復興リーダーたちの言葉に耳を傾ける。淡々と取り組みについて語りながらも、表情や呼吸の1つ1つから、リーダーたちの言い尽くせない内面が伝わってくるようだ。

わわプロジェクトのディレクターを務める中村政人氏は、「一対一で人と話すときのようなリアリティをもって、現地の人の心の揺れや叫びを届けたかった。15人の語りを見ていくと、そこで起こったことだけでなく、つくり手としての問題意識や人間性、社会性がにじみ出てくるのではないか」と語った(中村政人氏のインタビューは、こちらをご覧ください)。


▲芳賀正彦氏(特定非営利活動法人 吉里吉里国)。瓦礫を薪にして販売するプロジェクトを終え、地域再生を視野に入れた展望について語っている。15人のインタビュー内容は、わわプロジェクトのサイトで視聴することもできる


▲会場ではじっくり映像に見入っている人がほとんど

ここにはさまざまな支援や活動のカタチがある。しかしどれも完成形ではなく、被災地の状況とともに試行錯誤しながら同時進行で展開しているものばかりだ。何が正解で何が尊いかということではなく、活動している人たちが今何を共有し、何を考えているかということに目を向けたい。そこから何が派生してくるかは、ひとりひとりに委ねられている。(文・写真/今村玲子)


「つくることが生きること 東日本大震災復興支援プロジェクト」展

会 期: 2012年03月11日(日)〜25日(日)
     12:00〜19:00(最終入場30分前)
     *会期中無休
     *連日、トークショウや対談なども開催中

入場料: 無料

会 場: 3331 Arts Chiyoda 1F メインギャラリー




今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらへ

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