展覧会   

国立国際美術館「世界制作の方法」展、レポート

11.10.31

国立国際美術館(大阪・中之島)では、国内外で活躍する9組の日本人若手アーティストが、同館の広い展示空間を使って大型インスタレーションを制作するという展覧会を開催中だ。

本展タイトル「世界制作の方法」とは、20世紀アメリカの哲学者ネルソン・グッドマンの著書名に由来している。グッドマンは同書のなかで記号論的方法によって世界の多数性を論じ、「『世界』はあくまで制されるものであり、それはいくつものバージョンを作ることである」と述べている。鑑賞者はアーティストたちの手がける展示室を回遊式に巡っていくが、作家ごとに次々と変わる世界観が興味深く、彼らの世界のとらえ方や表現の仕方に驚かされる。これらを眺めるだけでも、世界は1つではなく、それどころか人間の思考の数だけ存在するということが確実に伝わってくる。以下に作品のいくつかを紹介しよう。

まず会場を入ってすぐに圧倒されるのは、デザイナーとアーティストのユニット「パラモデル」が展開する壮大な空間「paramodelic – graffiti」。設計図をもとに、タカラトミーの玩具である「プラレール」を空間全体に張り巡らせ、幾何学的な巨大グラフィックを描き出す。ワークインプログレスの形式をとることで、プラレールのプロセスを楽しむ遊びの要素とリンクさせながら、つくっては壊すという永遠に完成することのない世界の構築に取り組む人間の宿命的なプロセスをも垣間見せる。


▲パラモデル ≪paramodelic – graffiti≫ 2011年 Photo by Kazuo Fukunaga ©国立国際美術館

続いて、ハッカーでありメディアアートの分野でも活躍するユニット「エキソニモ」は代表作である「ゴットは、存在する。」シリーズの新作を展開。タイトルは「GOD」との音の近似性を利用し、「神的な存在を召還する」という意味合いを想起させる。そこには「電子空間のなか、人の手を介することなく自動な動きを見せる作品は、超越的な力を感じさせる」という作家メッセージが込められている。

例えば「迷い」は、ブログやツイッターなどインターネット上に無数に行き交うテキストの一部を自動変換することで、「ゴット」という単語があらゆる文脈のなかに現れ、なかにはたまたま面白い文章になってしまうという作品だ。また「祈」は、2つの光学マウスを向かい合わせることで、混乱したポインタが無軌道な動きをする作品。鑑賞者はこうした作品を通じて、人間による恣意的な操作と、何らかの偶然性が働くことで生じるドラマティックで意味深な瞬間を目の当たりにするだろう。


▲エキソニモ ≪ゴットは、存在する。≫ 2009年/2010年 Photo by Kazuo Fukunaga ©国立国際美術館

また、クワクボリョウタは真っ暗な空間に鉄道模型の線路を構成。LED照明を取り付けた列車を走らせることで、線路の周囲に並べた積み木や食器、文房具などのモノの陰影がダイナミックに室内に投写されるというインスタレーション「10番目の感傷(点・線・面)」を展示。真っ暗な空間に座り込み、龍安寺の石庭を眺めるようにじっと影を見つめ続ける鑑賞者たちの姿が印象的だった。


▲クワクボリョウタ ≪10番目の感傷(点・線・面)≫ 2011年 Photo by Kazuo Fukunaga ©国立国際美術館

ほかにも、廃材やガラクタのようなモノを積み重ねて神殿のようなオブジェをつくったり、写真の上にマンガのようなコラージュを施すことで、もともとそのものが持っていた意味を消し去ってしまう金氏徹平や、蓄光塗料と電球とタイマーを使って目に見える世界と見えない世界をおぼろげにたゆたう作品を展開する木藤純子など。普段、見慣れているモノを材料として扱いながら、そこに全く違う意味を持たせることで世界の見え方をガラリと変えてしまう。70年代生まれアーティストたちのクールで研ぎ澄まされた感性や視点が興味深い。(文/今村玲子)


世界制作の方法 “Ways of Worldmaking”

会 場:国立国際美術館(大阪・中之島)
会 期:2011年10月4日(火)〜12月11日(日)
開館時間:午前10時〜午後5時、金曜は午後7時(入館は30分前まで)
休館日:毎週月曜日
観覧料:一般850円、大学生450円
無料観覧日:11月3日(木・祝)「文化の日」




今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。

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