イノベーションを生む新手法「エスノヴィジョン」とは?(後編)
11.09.29

博報堂とAXISデザインチームにより、六本木のAXISギャラリーで先月催された「エスノグラフィから生まれるプロダクトデザイン」展。前編では、生活者発想のイノベーションを創造するプログラム「エスノヴィジョン」を紹介した。後編では、ビジネス課題のなかで商品開発に特化した「エスノヴィジョンプロダクト」について触れていく。
博報堂が開発した「エスノヴィジョン」は、デザイン、ブランディング、ビジネスモデルを創出するためのトータルなソリューションである。この3つが欠けることなく、マーケティングまでカバーするのが特徴だ。展覧会ではAXISのプロダクトデザインチームと取り組んだ「メンズケアの新商品開発」のケーススタディについて展示、「エスノヴィジョンプロジェクト」のプログラムがどのように進行するかを紹介した。
1. 生活者理解
「エスノヴィジョンプロジェクト」は通常、3〜6カ月をかけて取り組まれる。最初に行うのはエスノグラフィ調査。新たな仮説を引き出すための「エクストリームユーザー」へのヒアリングでは、写真撮影やノートへの記述から対象者に迫っていく。その他、日記調査や有識者へのヒアリングなども行う。

エクストリームユーザーへのヒアリング結果は、このようなペーパーにまとめられる。ストーリーテリングの手法は、メンバー間で現場のリアリティを共有するのに効果的だ。
2. 機会発見
次のフェーズでは、調査内容をチーム全員で共有する。「ダウンロード」と呼ばれる作業は、ワークショップを通じた双方向の学習型情報共有のこと。続く「シンセシス(フレームワーク)」と呼ばれるプロセスで、さまざまな視点から抽出した情報の統合と分析を繰り返していく。こうして狙うべきビジネス機会が策定され、戦略プランニングを経た後、具体的なアイデアが開発される。

ワークショップではポストイットなどを駆使。観察の中から見えてきた個別の事実や気づきを整理、分析していく。
3. デザイン
ターゲットとなるユーザー像を “ペルソナ” として描き出し、そのユーザーが「どのような経験をするか」という視点から、体験シナリオを描いていく。絞り込んだアイデアは、ラピッド(簡易)プロトタイプで検証。ユーザビリティの検証などを行うためには、さらに精度の高いプロトタイプを制作する。

会場ではスケッチやプロトタイピングを行う作業現場を再現。プロダクトデザイナーたちによる試行錯誤の跡をそのままに見せた。
4. 顧客経験デザイン
「エスノヴィジョンプロジェクト」の最終ステップは、具体的な商品やサービスの提案だ。プロトタイプで設計したデザイン案を2Dと3Dの各レベルで提出。これらの作業は、クライアントチームとの協業体制で行われる。

メンズケアの新商品として提案されたプロトタイプ「スマートスライド」。ステーショナリー感覚で持ち運べるコンパクトなホルダーと、豊富なラインナップの超薄型カートリッジの組み合わせだ。
メンズケアにおける市場機会を捉え、形を持ったプロダクトデザインで披露した「エスノグラフィから生まれるプロダクトデザイン」展。紹介されたプログラムは、プロジェクトマネージャー、エスノグラファー、コピーライター、デザイナー、ストラテジスト……異なる職種のメンバーたちがチーム一体となって進める共創型開発だった。「イノベーションを生み出すツール」としてのエスノヴィジョン、来場者はその有効性を確認できたのではないだろうか。
本件に関するお問い合わせは、AXISデザインチーム(担当:山田)まで。
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