第14回「10周年を迎えたフォルクスワーゲン アウトーシュタット その4」
10.08.12

今回もアウトーシュタットのさまざまなアートワークについてご紹介します。
自動車ミュージアムの「ツァイトハウス(タイムハウス)」はオーストリアのアーティスト、ペーター・コーグラー(AXIS 110号「アングル」で空間インスタレーションを紹介)とのコラボレーションで全く新しいスタイルのエキシビションになりました。チューブから出した黒と白の絵の具をぐじゅぐじゅに混ぜたようなオーガニックなパターンが壁面を覆い、空間のところどころにパーティション機能も果たす無定形のスカルプチャーが配されています。

ダイナミックに流れる線や面は、磨き上げられた車体の光反射に着目してコンピュータで加工・修正を施していきました。デジタル印刷で壁画ではありません。

いったい何が壁に貼られているのか調べてみると、ネッシェンというドイツメーカーの特殊なテキスタイルだそう。モンタージュ作業だけで3カ月かかり、作業後には、どんな微細なミスもないよう、2000平方メートルにおよぶ面をすべてルーペでチェックしたそうです。

「レベルグリーン」はアウトーシュタットで最新のプロジェクト。環境、社会、経済の3つの異なる側面から“サスティナビリティ”について、子供も大人も楽しみながら考える体験型エキシビションです。当然ながらカーボンニュートラルなマテリアル、あるいはリサイクルされたマテリアルが使われています。

ベルリンの建築事務所「J. マイヤー H.アークテクテン」がエキシビションの空間デザインを、インタラクティブな展示内容はベルリンのニューメディア・クリエイター集団「アート+コム」が担当しました。ドイツでお馴染みのグリーンの矢印が循環するリサイクマークがデザインの起点にありました。

リサイクルマーク
空間に植物が根を張り巡らすかのように、グリーンの帯が複雑に入り組んでいます。

「グリーンレベル」の下の階にはニューヨークのハニ・ラシッドとリズ・アン・クーチュールのユニット「アシンプトート」がデザインしたエキシビションコーナーがあります。

車体の成形プロセスや風洞実験からインスパイアされたという、メタリックかつ空間にうねるように介入するエレメントに好奇心をそそられます。

ところで、ドイツで初めて本格的な日本の手打ち蕎麦や手打ちうどんを提供するジャパニーズヌードルレストラン「庵アン」が2006年にアウトーシュタットにできたときも、ベルリンならまだしも、ヴォルフスブルクで蕎麦屋ですから誰もが驚きました。今はもう帰国されていますが、蕎麦マイスターとして招聘されたのが経済学者の小黒正夫教授。旭川大学を定年退職されてアウトーシュタットへ。当初は純和風のレストランを想像していたそうで、このポップな店内にはびっくりしたようです。店舗デザインはチューリッヒの「ホソヤ・シェーファーアーキテクト」。

アクリスガラスのセルにプリントされたグラフィックワークは複数の日本の若手アーティストに声をかけてプロジェクトに参加してもらったもの。テラスではコンスタンティン・グルチッチのチェアワンに座ってラーメンをズズーッといただけます。(文・写真/小町英恵)
この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。
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